
全国20カ所でシネコン(=シネマコンプレックス:複合型映画館)を展開しているユナイテッド・シネマ。近年は「デザインシネマ」というコンセプトのもと、既存の枠組みを超えた新しい映画館の楽しみ方を提案。その独自性のある感性豊かな空間は3年連続グッドデザイン賞を受賞するなど、お客様だけでなく業界内外からも高い評価を得ている。その仕掛け人、秋山訓久氏へのインタビュー。
── 「デザインシネマ」というコンセプトはどこから生まれたのですか?
シネコンはもともと米国からスタートし、日本では90年代の中頃から全国各地に展開が始まりました。これによって観客動員数が増大し、映画館に人を呼び込む場としての新たな可能性が切り開かれたのですが、当初は欧米の映画館のデザインを模したものしかなく、どこへ行っても似たような施設ばかりになってしまいました。映画館のデザインはこのままでいいのだろうかと模索していたところ、2004年にユナイテッド・シネマとしまえんを建設することになり、東京の都心部につくるシネコンとはどうあるべきか、映画館そのものの在り方を問い直す試みを始めたというのが、そのきっかけですね。
── 「映画館の在り方」をどう問い直していったのでしょうか?
映画といえば「エンターテインメント」や「ワクワクドキドキ」といった言葉がすぐ出てきますが、そうした既成概念をあえて断ち切って、「映画の楽しみ方って何だろう?」ということを改めて考えたのが出発点です。たとえば、本や小説を読むような感覚で、気持ちを落ち着かせるために映画館へ行くというのがあってもいい。日常から離れすぎず、そして上質な時間を過ごせる場所として、映画館という場を提供できたらと思ったんですね。

ユナイテッド・シネマとしまえん
── ユナイテッド・シネマとしまえんでは具体的にどんな工夫をしたのですか?
まず外観は、それまでシネコンの代名詞だった派手なネオンをやめて、住宅街にも自然と溶け込むモダンな建築の公共施設をイメージしました。また館内に外光を大胆に取り込んだり、エントランスに当たり前のように敷かれていたカーペットを外したりと、それまでのシネコンの常識では考えられないような設計をしました。他にも、案内表示となるピクトグラムやタイポグラフィ、従業員のユニフォーム、売店のディスプレイ、待合ロビーの装飾等、細部にこだわって一つ一つを洗い直し、映画館という空間全体をコーディネートしていきました。
── その結果、お客様の反応はどうでしたか?
おかげさまで好評をいただきお客様の層が非常に広がりました。地域に溶け込んだ空間として、たとえ映画を見なくても気軽に入ることのできる場所として利用してくださる人が増えたんですね。たとえば散歩の途中でふらっと立ち寄って、ロビーで上映予定を確認して、ちょっとお茶をして、という使い方もここではできるわけです。ユナイテッド・シネマが掲げている「地域に密着して、お客様に信頼され、愛される映画館」を文字通り体現する場所となりました。観客動員数も順調に推移しています。


